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口腔がん

1.口腔癌とは

1)統計

口腔癌とは、舌、歯肉、頬粘膜、口蓋、口腔底、口唇など、口腔を構成する部位に発生する癌の総称です。発生頻度は全癌の約4%を占め、性別頻度では女性よりも男性が約2倍多く発生しています。最も多く発生する部位が舌で全体の約半数を占め、次に歯肉、口腔底、頬粘膜の順になります。

2)組織分類

組織学的には扁平上皮癌が圧倒的に多く、ついで唾液腺に生じる腺様嚢胞癌などの上皮性癌が占めます。稀に非上皮性癌(肉腫)も生じますが、他部位からの転移性腫瘍や悪性リンパ腫が口腔領域に出現することもあります。

3)治療の概略

口腔癌の治療法は、組織型や進行度、そして患者さんの全身状態によって異なります。外科的切除、化学療法、放射線治療が治療の主体で、それらが組み合わされた治療も行われます。最近では、腫瘍の栄養血管(動脈)に抗がん剤を直接流す超選択的化学療法も行われ、以前より治療成績が向上しています。

4)原因

原因としては、喫煙、飲酒、歯列不正、う蝕歯、不適合義歯、口腔の不衛生などが考えられます。また、喫煙飲酒歴の長い患者さんでは、上部消化管に重複して癌を発生することがあるため、併せて内視鏡などによる検査を行うこともあります。

2.症状

口腔癌の一般的な症状は、病変部位の腫れや潰瘍、痛みです。また、硬いしこりを形成することも多いです。顎の骨に発生した癌は、唇やオトガイ部のしびれなどの神経障害や、歯の痛み、歯の動揺を生じる場合もあります。中には、以前から続いていた粘膜の白色、紅色病変(白板症、紅板症)が癌化することもあります。この場合、前がん病変として処置および経過観察が必要です。また、口腔癌は頚部リンパ節に転移することがあるので、顎の下や首すじの腫れを伴っているときは要注意です。ただの口内炎と思って放置している場合が多く見受けられるため、口内炎がなかなか治らないときは速やかに口腔外科を受診することをお勧めします。

3.診断

1)擦過細胞診、組織生検

病変部の表面を擦り取って、癌細胞の有無を顕微鏡検査する方法と、病変の一部をメスで切り取って、癌細胞の有無だけでなく組織型や性質まで顕微鏡検査する方法があります。病変が深い位置にある場合は、針を刺して病変の一部を採取することもあります。

2)レントゲン、CT、MRI

癌の大きさや深さ、周囲の組織とのつながり具合などを評価します。特に、造影剤を使った造影CTや造影MRIでは頚部リンパ節への転移もあわせて調べます。

3)骨シンチ、ガリウムシンチ

癌の範囲や骨への浸潤具合を、全身的に調べます。肺など遠くの臓器への転移がないかを評価します。

4)超音波検査

頚部リンパ節の大きさや内部の状態を調べます。CTやMRIに比べて検査が簡便です。

5)腫瘍マーカー

血液検査で、口腔癌に特異的な腫瘍マーカーの値を検査します。ただし、腫瘍以外の要因で値が上昇することもあるので、腫瘍マーカーはあくまで治療や経過観察時の目安と考えます。

4.病期(ステージ)

口腔癌は、病巣の大きさや転移リンパ節の有無、遠隔転移の有無などにより分類(TNM分類)されます。

T-原発腫瘍(腫瘍の大きさ)

Tx:評価不可能,T0:腫瘍を認めない,Tis:上皮内癌,T1:2cm以下,T2:2-4cm,T3:4cmを超える,T4:隣接臓器に及ぶ

N‐所属リンパ節(転移リンパ節の大きさ)

Nx:評価不可能,N0:転移なし,N1:3cm以下,N2:3-6cm,N3:6cmを超える

M-遠隔転移

Mx:評価不可能,M0:なし,M1:あり

上記のTNM分類を元に病期分類(ステージング)がなされます。

Stage 0: Tis N0 M0
Stage Ⅰ: T1 N0 M0
Stage Ⅱ: T2 N0 M0
Stage Ⅲ: T1,T2 N1 M0
T3 N0,N1 M0
Stage Ⅳ: stage 0-Ⅲ以外(省略)

5.治療

外科療法、化学療法(抗癌剤)、放射線療法の3つが主体となります。一般的には、手術単独で行われたり、3つを組み合わせることが多いですが、癌の種類や進行度(ステージ)、患者さんの健康状態を考慮して治療法が選択されます。

1)外科療法

癌の浸潤度、進展度により術式は異なります。病変よりも大きめに切除する必要があるため、予想よりも欠損が大きくなることが多いです。欠損の大きさにより、再建が必要になる場合があります。軟組織の再建には、胸や肩の組織をつなげたまま移動させる方法や、おなかや足の組織を切り離した後、首の血管とつなぐ方法もあります。顎の骨を切除した場合は、再建用の丈夫なチタンプレートで顎の輪郭を回復したり、骨移植を行ったり、特殊な入れ歯で穴をふさいだりします。後日、創が落ち着いてから、形態の修正や機能回復の目的で追加手術を行うことがあります。

2)放射線療法

高エネルギーの放射線を体の外から患部めがけて照射して癌細胞を破壊する方法です。一般的には1日1回週5日間照射で4~6週間かかります。放射線療法はよく化学療法と組み合わされて行われます。この治療法の副作用として、照射部位の口内炎や火傷の症状(皮膚炎)、倦怠感、食欲不振、嘔気などの症状があります。

3)化学療法

単剤もしくは2種類以上の抗癌剤を静脈注射や動脈注射または内服する治療法です。抗癌剤は血流に乗って全身を巡り、口腔癌のみならず転移した癌細胞にも奏功します。抗癌剤のみで肺癌を完治させることは現状ではほとんど不可能ですが、癌巣を小さくしたり、増殖を抑えたり、転移を予防したりする効果が期待できます。抗癌剤は正常細胞をも痛めますので、種々の副作用があり、稀に致命的なこともあります。嘔気、食思不振、下痢、便秘などの消化器症状、口内炎、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血)、末端神経症状(手足のしびれ)、脱毛、腎機能障害、肝機能障害、心機能障害、肺障害などが上げられますが、使用する薬の種類や個々人の感受性によって症状の出方に差があります。吐き気止めの点滴や白血球を増やす注射でこれらの副作用に対処します。脱毛や神経症状は長引き、有効な治療法もありません。他の副作用は2~4週間で回復します。
最近では、癌に栄養を供給する栄養血管(動脈)にカテーテルを送り込み、直接抗癌剤を流す方法(超選択的動注化学療法)も盛んに行われるようになり、治療効果の向上、外科療法による機能障害の軽減、患者さんの精神的負担の軽減に貢献しています。

6.予後

ステージにより5年生存率は異なりますが、ステージが進むにつれて成績は低下します。下記の数字は、おおよその平均的な数字です。

Stage Ⅰ: 90%以上
Stage Ⅱ: 80%前半
Stage Ⅲ: 70%前半
Stage Ⅳ: 50%台