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ロボット手術

ロボット手術とは?

患者さんの体への負担を軽減し術後の早期回復を図る腹腔鏡手術(胸腔鏡手術)が盛んに行われています。しかし、手術器具の動きには制限があり、また内視鏡を通して得られる画像も平面で奥行きがわかりませんでした。

"ロボット手術は腹腔鏡手術の進化型"

ダヴィンチサージカルシステム(Intuitive Surgical社製da Vinci Surgical System)は腹腔鏡手術を支援する内視鏡下手術支援ロボットです。ロボット手術といっても機械が自動的に手術を行うわけではありません。術者は内視鏡からの3Dのハイビジョン映像を見ながら最大15倍の拡大視野のもと、体内に挿入された手術器具を専用のコントローラーを用いて遠隔操作で動かし手術を行います。手術器具は操作する術者の手を同じように自由自在に動き、また、手ぶれ防止機能を備えているため精密で確実な手術操作が可能です。したがってロボット手術は腹腔鏡手術の進化した形と言えます。

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(手術風景イメージ)

ロボット手術の利点

小さな傷

腹部に鉗子を挿入するための8~12mmの穴を数か所開けるだけです。従来の開腹手術と比べ格段に小さく、痛みも少ないです。手術痕もほとんど目立たなくなります。

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(術後の手術創)

少ない出血量

炭酸ガスで腹腔内を膨らませて手術操作を行うためのスペースを作ります。この気腹圧のおかげで開腹手術に比べて出血量が少なくなります。

緻密で確実な手術操作

ダヴィンチのアームに装着された手術器具の先端部には多数の関節があり、コントローラーを通して術者の手の動きが忠実に伝わります。また、関節の可動域が人の手の関節より広いため複雑な操作が可能で、狭い空間でも自由に器具を操作することができます。

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(サージョンコンソール(左)とペイシェントカート(右))

機能温存

人間の目で見るよりも拡大された視野を立体的な3D画像で見ることができるため、従来の前立腺がん手術では見えにくかった細かい血管や神経、組織の膜構造が確認できます。それに加え、ダヴィンチの緻密で確実な手術操作により、術後の尿失禁予防や性機能温存、根治性の向上が期待できます。

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(マスターコントロールと鉗子の先端)

ロボット手術の対象となる疾患

現在、前立腺がんに対する前立腺全摘術、および、腎臓がんに対する腎部分切除術が保険診療の適応となっています。当院ではロボット支援前立腺全摘術を行っております。今後、ロボット手術は肺、食道、胃、直腸、膀胱、子宮がんに対する手術が保険診療の適応となる見通しです。

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(手術風景実際)

当院の治療成績

2014年5月から2017年12月までに180件のロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を施行しました。患者さんの年齢は48~79歳、PSA(前立腺特異抗原)値は3.01~47.82 ng/mLでした。当院では、全例に閉鎖リンパ節郭清を施行し、症例によっては内腸骨リンパ節、外腸骨リンパ節、閉鎖リンパ節を含む拡大リンパ節郭清も行っています。また、生検や画像検査所見より得られた癌の存在部位の情報をもとに、癌の根治性が損なわれないと判断された場合は、積極的に陰茎海綿体神経(勃起神経)温存を行っています。180例のうち、片側神経温存を64例(36%)に、両側神経温存19例(11%)に施行しました。
手術手順の詳細については内視鏡手術センターのホームページをご参照ください。
手術成績は、平均手術時間は3時間42分、平均出血量は329mlであり、輸血(自己血輸血を除く)を行った方は2例(1.1%)でした。術後3ヶ月以内に発生したGrade3以上(外科的、内視鏡的、血管内治療を要するもの)の周術期合併症は4件(2.2%)で、いずれも適切な治療を施行し軽快しました。
術後の経過は、手術翌日より飲水を開始、食事は手術翌日の夕食から再開します。手術翌日より離床を開始し、手術翌日または2日目から自力で歩いていただけます。術後、尿道カテーテルが留置されますが、尿道膀胱吻合部の癒合を確認し、術後、平均6日目に尿道カテーテルを抜去します。術後、7~10日ほどで退院となります。
術後の尿失禁については、術後3ヶ月の尿禁制率(尿が漏れない状態)は48%、半年で65%、1年で75%、2年で81%でした。陰茎海面体神経を温存した方は、術後の尿失禁の回復が早い傾向を認めました。また、両側神経温存を温存した方は全員、術後1年の時点で尿失禁は止まっていました。
術後3ヶ月以降に生じる晩期合併症として、鼠径ヘルニア(12%)、吻合部尿道狭窄(1.6%)、癒着性イレウス(0.6%)などがありました。

ロボット手術チーム

ロボット手術を安全に行うためには多職種がそれぞれの役割を果たしつつ、綿密な連携をとっていくことが大切です。当院では、ダヴィンチ手術専任の泌尿器科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士がダヴィンチ手術チームを作り、手術の安全性の向上と手術技術の向上に日々取り組んでおります。