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~医療用麻薬による痛みの治療をはじめられる方へ~

はじめに
 痛みは、多くの患者さんが最も恐れている症状の一つです。痛みを我慢していると食欲低下、不眠、動くのが億劫になるなど日常生活への支障が出てきたり、気持ちが落ち込んだり、不安定になったりすることがあります。また、痛みで体力が消耗すると、からだが治療に耐えられなくなることもあります。がんによる痛みは、すべてをとり除くことができないこともありますが、そのほとんどは適切な痛みの治療を行えばやわらげることができます。医療用麻薬は、がんによる痛みをやわらげ、痛みによる日常生活への支障や体力消耗を軽減するために効果的な薬です。

痛みの治療や医療用麻薬に対するよくある質問
Q:医療用といっても麻薬を使えば麻薬中毒になるのでは?
A:痛みの治療を目的として、医師から処方されたものを正しく使用すれば麻薬中毒になる心配はありません。

Q:麻薬を使うと頭がおかしくなるのでは?
A:医療用麻薬の使用で精神状態や意識の混乱が生じることはまれで、その他の身体の原因であることが多いです。仮に生じても薬の量を調整したり、種類を変更したりすることで症状は改善します。

Q:痛み止めは、できるだけ少ない量で我慢する方がよいのか?
A:いいえ。痛みを我慢していると日常生活に影響が出てしまうので、我慢せず、早い段階から痛みが和らぐよう十分な量の痛み止めを使うことが大切です。

Q:麻薬は最後の手段と聞いたことがあるが、そんなに病状が悪いのか?
A:医療用麻薬の使用と病状は必ずしも関係はありません。手術後の強い痛みにも使用することがあります。決して最後の手段などではなく、痛みの性質などに応じて必要な時期から開始することが正しい使い方です。

痛みを上手に取り除くために
 がんのある場所などによって痛みの強さや性質は異なります。痛みの感じ方も患者さんによって違うため、薬の量や種類をその人ごとに調整する必要があります。痛みに関する最良の情報源は患者さんご自身です。患者さんの情報をもとに、私たちスタッフがサポートしていきます。痛みを伝える際、以下のような方法を活用してみてください。

〈痛みの伝え方〉
① 痛みがあるためにできないこと(生活への影響)
  眠れない・歩けない・食べられないなど
② どこが痛むか
③ いつから痛むようになったか
④ どのような時に痛いか
  一日中・動いたとき・じっとしているとき・一日のうちで決まった時間帯・寝ているとき・決まっていないなど
⑤ どのような痛みか
  ズキズキ・ズーン・ピリピリ・チクチク・ギュー・ジンジン・脈を打つような痛み・圧迫されるような痛み・刺すような痛みなど
⑥痛みの強さはどれくらいか
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痛み止め以外の痛みの和らげ方
 痛みの緩和につながる方法として、薬以外にも日常生活で工夫をすることが大切です。「どのようにすると痛みが強くなり、また和らぐのか」を考え、生活の中で悪化する要因や軽快する方法を見つけてみてください。

例)温める・冷やす・横になるときの向き・座り方など

医療用麻薬の種類
内服薬・外用薬

定期薬 レスキュー薬
オキシコンチンTR錠 オキノーム散
フェントステープ アブストラル舌下錠
ナルサス錠 ナルラピド錠
MSコンチン錠 オプソ内服液
タペンタ錠
メサペイン錠


注射薬

オキファスト注
フェンタニル注
ナルベイン注
モルヒネ塩酸塩注



医療用麻薬の使用方法

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レスキュー薬を上手に使用するコツ
☆我慢せず・予防的に
 痛みを我慢して過ごすと、かえって痛みによる体力の消耗、食欲低下、動くのが億劫になるなど、日常生活に使用が出ることがあります。また、我慢しているうちに痛みが治りにくくなることもあります。痛みがあるときは我慢せずにレスキュー薬を使用してみてください。また、動作時(歩く・体の向きを変えるなど)に痛みが強くなることが予想できる場合には、その動作の30分から1時間前に予防的に使用することができます。
☆記録を残す
 レスキュー薬を使用したら、使用した時間をメモすることをお勧めします。いつ、どんな状況で痛みを感じたか、具体的に記載されていると痛みの程度や原因が想像しやすくなります。薬の量の調節など、痛みの治療においてとても重要な情報になります。

医療用麻薬の代表的な副作用とその対策
便秘
 多くの患者さんにみられ、服用中はずっと続きます。下剤の服用も効果的ですが、それ以外に水分や食物繊維を十分に摂取、運動(できる範囲で適度に身体を動かす)、おなかのマッサージなども効果的です。
眠気
 開始時または増量時に起こることがあります。からだが薬に慣れてくると、ほとんどの場合は1週間程度で自然に症状がなくなります。
吐き気
 開始時または増量時に起こることがあります。からだが薬に慣れてくると、ほとんどの場合は1週間程度で自然に症状がなくなります。

 これらの代表的な副作用のほかに、尿が出にくくなる、口や喉が渇く、かゆみ、呼吸がゆっくりになるなどが知られています。別の医療用麻薬に変更することなどで症状が改善することがありますので、気になる症状があれば医療スタッフにご相談ください。