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外科・消化器外科・小児外科・乳腺外科

外科・消化器外科・小児外科・乳腺外科の紹介

 外科・小児外科では平成28年4月現在、院長を筆頭に、部長3名、医長5名、医員8名の計17名で診療に従事しています。外科では消化管、肝胆膵、乳腺などの専門性を必要とするがん治療から、胆石、ソケイヘルニア、痔核などの良性疾患、虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、外傷などの救急疾患、小児外科、血管外科までの幅広い領域の疾患に対し外科治療を担当しています。消化器外科専門医7名、さらに小児外科・乳腺外科の専門医を1名ずつそろえ、どの分野でも盲点がなく最新の治療を提供できるよう日夜診療に従事しています。
当外科の特色として手術件数の多さが挙げられ、全国の市中病院でもトップクラスの件数を誇っています。地域がん診療拠点病院に認定されていますので消化器・乳がん手術件数はもとより、緊急手術も多く昼夜問わず対応しています。高齢化社会の現在、80歳をこえる患者さん、心臓や肺などに合併症を抱える患者さんも明らかに増加してきておりますが、このような方々にも各科の医師・コメディカルとの連携を密にし、安全で可不足ない治療を行うよう努めています。
現在当外科では腹腔鏡手術(ラパロあるいは内視鏡手術ともいう)に重点を置いた外科治療を行っています。特に胃癌、大腸癌では進行癌をのぞく初期から中期の癌に対して積極的に腹腔鏡手術を施行しています。平成27年12月までに、腹腔鏡下胃切除が444例、大腸切除が552例あり、今後さらなる症例の増加によって手術自体の安全性も担保されます(手術の安全性は症例数に比例すると言われています)。患者さんは目立たない傷(最大で7cm)、術後の早期回復に満足されています。また当院の十八番の肝胆膵がんの手術も厳格な適応の元、早期のがん、あるいは前がん病変に腹腔鏡下手術をとりいれて患者さんの負担の軽減に努めています。食道癌はほぼ全症例で腹腔鏡/胸腔鏡を用いた手術を行っていますし、最近は下部直腸癌に対して腹腔鏡下ISR(超低位直腸切除、括約筋温存吻合術)を導入して、従来なら人工肛門になっていた患者さんを人工肛門から解放して肛門機能を温存する術式にも取り組んでいます。
当科では腹腔鏡下そけいヘルニア根治術(TAPP)を積極的に導入しています(詳細は内視鏡手術センター参照)。平成24年11月から開始して平成27年12月で371症例を経験しました。全身麻酔で平均手術時間40分、術後入院は2日です。現在までに再発は1例のみで安定した術式といえます。従来法(メッシュプラグ法)に比べて痛みが少なく、かつ傷が目立たないので美容上も推奨されます。今後はそけいヘルニア手術の標準術式になると考えています。
日本肝胆膵外科学会より高度技能医修練施設Aに認定されました。この施設基準は2008年より日本肝胆膵臓外科学会の指導で始まりましたが、2010年度の当外科の肝胆膵外科手術は162例あります。具体的には肝切除は胆道再建なしが103例、胆道再建ありが15例で、内HPD(肝膵同時切除)は3例ありました。PD(膵頭十二指腸切除)は35例で、内膵がんが22例と多くを占めます。当外科の伝統である肝胆膵外科手術は周辺地域からの紹介も多く、今後も増え続けるものと思われます。これは当外科が高度進行癌にもひるまず、血管合併切除再建の技術を利用して果敢に挑戦し続ける姿勢を貫いているからだと理解しています。

基本方針

  • 当院の基本理念に従い、患者中心の外科医療を行います。
  • 救急疾患が多いため、患者さんの状態に合わせた医療を優先し、無駄な検査、不必要に長い入院期間を徹底して排除し、患者さんが喜んで退院できるように努力します。
  • その基礎となる画像診断、緊急手術を含めた早期治療を外科医・コメディカル全員の共通意識のもと、一丸となって取り組みます。

スタッフ紹介

金岡 祐次
金岡祐次 外科部長
役職 院長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
昭和59年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本肝胆膵外科学会
名古屋大学臨床教授
専門分野 肝胆膵,腹腔鏡手術
血管合併切除を要する拡大手術
原田 徹
原田 徹 小児外科部長
役職 小児外科部長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
昭和55年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本小児外科学会
名古屋大学臨床講師
専門分野 小児外科手術
亀井 桂太郎
亀井 桂太郎 外科医長
役職 乳腺外科部長
卒業大学名
医師免許取得年
山梨医科大学
昭和63年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本乳癌学会
日本臨床腫瘍学会
専門分野 乳がんの外科,化学療法
前田 敦行
前田敦行 外科医長
役職 外科部長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成元年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本消化器病学会
専門分野 肝胆膵,消化器外科,腹腔鏡手術
高山 祐一
役職 外科医長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成7年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本消化器病学会
日本内視鏡外科学会技術認定医
専門分野 大腸手術,消化器外科,腹腔鏡手術
深見 保之
役職 外科医長
卒業大学名
医師免許取得年
三重大学
平成12年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
日本消化器病学会
専門分野 消化器外科,肝胆膵,腹腔鏡手術
高橋 崇真
役職 外科医長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成13年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
専門分野 消化器外科,食道がん,腹腔鏡手術
尾上 俊介
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役職 外科医長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成14年
専門医資格(その他) 日本外科学会
日本消化器外科学会
専門分野 消化器外科,腹腔鏡手術
宇治 誠人
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役職 外科医長
卒業大学名
医師免許取得年
福井医科大学
平成18年
専門医資格(その他) 日本外科学会
専門分野 一般外科,腹腔鏡手術
森 治樹
役職 外科医員
卒業大学名
医師免許取得年
滋賀医科大学
平成22年
専門医資格(その他)  
専門分野 一般外科
渡邉 夕樹
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役職 外科医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成23年
専門医資格(その他)  
専門分野 一般外科
吉川 晃士朗
役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成24年
専門医資格(その他)  
専門分野 一般外科
寺崎 史浩
役職 外科医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成24年
専門医資格(その他)  
専門分野 一般外科
仲野 聡
役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成25年
専門医資格(その他)  
専門分野  
三岡 裕貴
役職 医員
卒業大学
医師免許取得年
愛知医科大学
平成25年
専門医資格(その他)  
専門分野  
岡本 和浩
役職 医員
卒業大学
医師免許取得年
滋賀医科大学
平成26年
専門医資格(その他)  
専門分野  
和田 侑星
役職 医員
卒業大学
医師免許取得年
富山大学
平成26年
専門医資格(その他)  
専門分野  

              

手術症例

診療実績

 当外科は1日約200人の外来診察、年間約2,000件の手術件数と90床のベッド数をもち、平成27年(2015年)の全身麻酔での手術件数は1709件でした。

  2015年 2014年 2013年 2012年 2011年
虫垂炎手術 186 176 203 174 201
小児ヘルニア手術 76 75 86 64 76
大人ヘルニア手術 275(128) 265(126) 274(108) 203(9) 201
胆石手術(胆のう摘出など) 281(185) 284(197) 237(167) 212(139) 236(123)
腸閉そく手術 108(3) 95(5) 73(1) 73(2) 86
胃切除 230(91) 161(80) 198(104) 179(73) 207(50)
結腸切除 203(50) 175(62) 151(49) 168(44) 155(25)
直腸切除 111(48) 104(48) 99(49) 109(39) 95(17)
食道切除 10(8) 13(12) 15(15) 15(2) 16
乳房切除 156 140 131 134 155
膵頭十二指腸切除 46 40 35 29 35
膵体尾部切除(膵腫瘍に対する) 21(0) 14(3) 16(5) 14(5) 12(3)
肝切除(肝がん) 65(24) 78(25) 60(18) 78(27) 47(5)
肝切除(胆道がん) 11(1) 18(1) 8 13 10
痔核手術 9 10 16 21 80
脾臓摘出 4(3) 4(3) 2(2) 4(3) 8(3)
下肢静脈瘤切除 27 53 57 38 44
小児全身麻酔手術(ヘルニア以外) 94(0) 86(2) 64(2) 99(1) 71

 上記以外の手術件数は割愛しました。
カッコ内は腹腔鏡下手術症例数です(内視鏡手術センター参照)。

学会発表

 当科の伝統は手術の忙しさに埋没せず、論文作成/学会発表等の研究活動を積極的に行うことです。特に最近は国際学会へ果敢に挑戦して最新の外科医療、未来に目を向けた日常診療を行うよう心がけています。最近の学術活動を表に示します。また、最近の論文の詳細については別紙をご覧ください。

  2015年 2014年 2013年 2012年 2011年
国内学会発表数(研究会含む) 84 72 66 55 46
国際学会発表数 8 5 5 1 1
論文数 14 9 11 11 4

主要ながんの治療成績

 国内のがんセンターを中心に治療成績の公表が行われる中、当外科も主だった癌腫の最新の治療成績をまとめました。Clinical Indicator(あるいはQuality Indicatorともいう)として治療成績を公表することは公正な医療を行う上で必要と考えています。外科では以前からUICC(Union for International Cancer Control)の国際基準のもとでステージ分類(癌の進行度)を行っていて、いわゆる日本独自の癌取扱規約にもとずくステージ分類とは異なるので注意が必要です。また、外科では手術例に限って治療成績をまとめたので、抗がん剤治療、放射線治療、あるいは無治療例などすべてのがんの生存率を反映していないことも留意点です。

各種がんの生存率/在院死亡率

胃がん 大腸がん 肝がん 胆道がん 膵がん 乳がん

外科の1日

  • 早朝カンファレンス
    月曜から金曜日までの平日は毎朝7:30に全員集合します。業務開始までの1時間、毎日検討会など行います(下記表参照)。症例検討会は月・木曜日の毎週2回行い、外科医全員で手術予定の患者さんの状態・画像を把握し、個々の症例に応じた治療法を検討します。火曜日の英語論文抄読会では外科治療の内容を中心に世界の最新の見聞・手術手技を紹介し勉強しています。水曜日の病理検討会では、肝胆膵症例を中心に術前の画像、手術、病理、予後を詳細に再検討し、次の診療につなげるようにしております。金曜日の術式検討会ではその週に行われた定型的なものから珍しいものまで、いろいろな手術を若手外科医が提示し手術方法の確認と認識を深めています。また曜日を問わず外来、病棟の問題症例を提示し全員で治療方針を検討しています。この1時間は若手外科医の教育およびレベルアップをはかる場としてもとても重要な時間となっています。
  • 外来
    毎朝8:30からは12:00までの午前中は外来、病棟、検査、手術にわかれ、午後からは外来・病棟の担当者各1名以外は全員手術を担当します。午前中は毎日1診から5診までの5枠で外来診療しています。午後は毎日一般外来ひと枠と、曜日によって乳腺、小児外科、血管外科の専門外来を開いています。詳しくは外来診療担当表をご覧ください。
  • 病棟回診
    午前中の病棟回診は副院長、部長、医長がそれぞれの曜日のチームリーダーとなり、数名の若手医師とともに病棟全患者の回診を行っています。当外科は主治医制ではありますが、原則は『チーム医療』ですので、上級医が若手外科医と直接ベッドサイドで診察することにより、一定のレベルを保った診察が可能となり、急変している患者さんを見落とさないよう、実際の診療が順調に執り行われているかなどを毎日全員でチェックしております。
 
早朝カンファレンス 症例検討会 英語論文 抄読会 病理検討会 症例検討会 術式検討会

各疾患の治療方針

A. 救急疾患

1. 腸閉塞(イレウス)

 腸閉塞とは何らかの原因により腸管内容の通過障害をきたした病態をいいます。腸閉塞はまず機械的通過障害による機械的と、腸管の運動が侵された機能的イレウスとに大別されます。さらに機械的イレウスは、腸管内腔が癒着や腫瘍によって機械的に閉塞されますが、腸管への血流障害を伴わない単純性イレウス(閉塞性イレウス)、腸管への血流障害を伴う複雑性イレウス(絞扼性イレウス)に分類され、絞扼性イレウスは緊急手術が必要になります。イレウスの大半は癒着によるイレウスですが、ほとんどの症例で手術は必要なく、絶食・補液・減圧することで改善します。
当外科ではイレウスの診断と治療を兼ね、また絞扼性イレウスの早期発見のために『大垣式』と呼ばれる治療法を20年来続けてきています(図1)。入院時に腹部造影CT検査を施行、閉塞部位を同定し腸管内の貯留液、腹水のCT値を測定します。癒着性イレウスと診断した場合、胃管(鼻から胃までのチューブ)を挿入し胃腸内の内容物を外に吸い出します。翌日、ガストログラフィンという造影剤を流し腹部レントゲンを経時的に撮影し大腸まで造影剤が流れるか否かを判断します。その流れ具合によりGrade分類(I~IIIb)し手術が必要かどうかを判断します。この方法により鼻からチューブを挿入する時間を短縮でき(図2)、また絞扼性イレウスの早期発見・治療が可能となります。

2. 胆石症

  症状のほとんどない方、軽い方にはキズの小さい腹腔鏡下胆嚢摘出術をお勧めしていますが、発熱を伴い腹痛などの症状が強く急性胆嚢炎を呈している方は緊急手術を行っています。この場合、基本的にはおなかを開ける従来からの開腹胆嚢摘出術を行っておりますが、最近では症例によって腹腔鏡を使うこともあります。
また胆石が胆嚢管を経由して総胆管内に落ちるいわゆる『落下結石』もしばしば遭遇します。これを総胆管結石といいますが、胆管の出口である十二指腸乳頭部にひっかかると胆管炎や膵炎をおこし重症化することがあります。この場合、基本的には内視鏡的治療(消化器科)を優先し石を取り除いた後に胆石の手術を行う方針としていますが、重症度に応じ消化器科と連携して治療を行っております(図3)。

 

B. 悪性疾患の治療方針

1. 食道がん

  食道がんの治療は各種検査の結果を総合的に評価して、がんの進展度と全身状態から治療法を決めます。大きく分けて、4つの治療法があります。それは、内視鏡治療、手術、放射線治療と抗がん剤の治療です。ある程度進行したがんでは、外科療法、放射線療法、化学療法を組み合わせてこれらの特徴を生かした集学的治療も行われます。当外科では右開胸開腹食道亜全摘、2領域郭清を行っています。切除後は基本的に胃を管状にして(胃管といいます)引き上げて残っている食道とつなぎます(胃管再建、胸腔内吻合)。最近は腹腔鏡を利用して極力小さな傷で患者負担を減らす努力をしています。この場合,腹部に6ポート,胸部に4ポートで,傷は右胸部に5cm(最大7cm)あるのみです。
食道がんの手術は合併症を起こすことが多く、その代表的なものは肺炎、縫合不全(つなぎめのほころび)、肝・腎・心障害です。これらの合併症が死につながる率、すなわち手術死亡率(手術後1ヵ月以内に死亡する割合)は2~3%と決して低い数値ではありません。すべての外科手術でいえることですが、安全で確実なうえに、患者さんの負担をできるだけ少なくするためにはやい手術を心がけており、体位変 換などに工夫をしています。
進行・再発食道癌にはTS-1+シスプラチンによる化学療法を行っています。また放射線療法も併用することがあります。

2. 胃がん

  胃がん治療はその発生部位と進行度により決められます。胃の粘膜内にとどまる小さながんには手術ではなく内視鏡的治療(EMR、ESD)が可能であります。それ以外の大半の胃がんは手術療法が最も有効で標準的な治療です。がんの部位によって体部、幽門部のものには幽門側胃切除を、噴門部の早期癌には噴門側胃切除を、全体に拡がっているもの、噴門部の進行がんに対しては胃全摘を選択し、すべての術式でリンパ節郭清も施行しています。また近接する膵臓に浸潤している場合はその部位により膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除も積極的に行っております。最近は早期癌に対しては通常の開腹手術よりも小さなキズで行える腹腔鏡補助下胃切除を導入し良好な成績をおさめています。
当科の腹腔鏡下胃切除術(laparoscopy-assisted distal gastrectomy: LADG、幽門側胃切除あるいはlaparoscopy-assisted total gastrectomy: LATG、胃全摘)の特徴は"6 Port(ポート)法"にあります。3人の外科医が両手をフルに使って手術をします(写真1)。ポートの位置は上腹部に扇状に広っがています。写真1でAがカメラ用、Bが吸引洗浄用(ともにスコピストが操作します)、CからFが術者あるいは助手の右手、左手用です(術者は患者の右側、左側と移動しながら手術します)。この方法は当科独自のものですが合理的で無駄がなく手術時間の短縮が図れます(平成23年時点の平均手術時間はLADG 2時間30分、LATG 3時間)。ハイビジョンシステムを導入したことで,高解像度による拡大視効果も得られています(写真2)。2台のハイビジョンモニターに映し出される腹腔内の様子を見ながら手術をしています。上方のビデオカメラで体外の様子も同時に録画できます。本術式を支えているのは、特にハーモニックスカルペル(LCS)というデバイスです(写真3)。電気メスのような熱凝固ではなく超音波振動を用いた切開凝固であり、かつ形状がケリー鉗子の形であるため、剥離操作/切離操作/止血操作と一台でほぼすべての手術手技を施行できます。これに止血用のクリップ、縫合用のステープラーが加わりますが、手術中の大半は術者の右手にはLCSが握られています。傷の大きさとしてはLADGでは上腹部に5から7cm、LATGでは臍上部に4から5cmの切開のみです。今後さらなる症例の増加が見込まれる分野の一つです。

 胃がんの肝転移の治療は当外科独自の治療方針をとっています。肝転移巣が肝左右どちらかに限局している場合、その肝葉切除を行い残肝に対し術後動注療法を行うというものです。2009年までに19例に行っておりますが、良好な結果を得ています(図4)。
また抗がん剤治療も積極的に行っております。手術で取りきれてはいるものの病理診断でステージIIまたはIIIの進行癌であった場合はTS-1による補助化学療法をお勧めしております。再発がんに対してはTS-1+シスプラチンを中心に効果、副作用と相談しながら、タキソールやイリノテカンなどの他薬剤に変更しております。

 

3. 大腸がん

  大腸がんは3群リンパ節郭清を標準としています。直腸がんでは排尿障害や性機能障害を防ぐため自律神経温存を心がけ予防的郭清は控えています。逆に高度進行直腸癌では骨盤内蔵全摘、仙骨合併切除術のような拡大手術も行っております。
早期大腸癌には腹腔鏡下手術を第一選択としています。消化器内科で粘膜にとどまる限局型早期がんは内視鏡的粘膜切除(EMR/ESD)を行っていますので、その適応外が腹腔鏡下手術になります。それより進行した癌では従来からの開腹手術によって、安全かつ確実な根治手術をしております。
大腸癌の肝・肺転移例では積極的に肝切除・肺切除を行い予後の延長を得ております(図5)。中には繰り返し再発する方もあり切除可能であれば複数回手術をする方もいます。しかし、再発巣の手術が不可能な方はIVH ポートを用いた通院治療センターでの外来抗がん剤治療(FOLFOX、FOLFIRI)を行っています。最近分子標的治療薬という新しいタイプの抗がん剤(アバスチン、アービタックス)もあり、これまでの抗がん剤と組み合わせて使っております。

 

4. 肝胆膵がん

  肝胆膵領域に発生するがんはその解剖学的特徴から胃や大腸に比べ手術の難易度が高まります。しかし根治を目的とする抗がん剤治療や放射線治療はいまだなく、手術で取りきれることが根治への第一歩となります。当外科は歴史的に肝胆膵症例が多く、胃がんや大腸がんと同様に全国でもトップクラスの手術件数を誇ります。術前の画像検査による病態把握と患者さんの状態を加味し、安全性と術後の合併症低減を第一に考え最適な術式を立案しています。一般的に、肝胆膵領域がん全体の症例数は胃や大腸に比べ少ないですが、その手術は技術的に難しく、現在の本邦においても手術死亡がおこりうる術式が多くあります。ですから、当外科のように症例数が多く、専門医のいる施設での手術をお勧めします。当外科では動脈や門脈、肝静脈などの血管合併切除・再建を積極的に行っております。以下に疾患別の概要を示します。

肝臓がん

  肝臓がんは大きく分けて肝細胞癌、胆管細胞癌、転移性肝癌の3つに分類されます。肝細胞癌は消化器科とのディスカッションにより手術と手術以外の治療法を検討します。手術の場合、患者さんの肝機能と病巣部位により切除範囲を決め解剖学的な系統的切除を行っております。肝機能の良好な方は半分以上肝臓を切除しても大きな問題はおこりませんが、肝細胞がんの場合、B型やC型肝炎を持っている方が多く、もともとの肝機能・予備能がよくないため切除量は限られてきます。根治性を高めつつ、かつ肝機能を温存するために手術の工夫が必要になります。そのひとつに肝静脈合併切除・再建があります。安全かつ迅速に再建するためVCSクリップという小さなクリップを利用し、再建時間の短縮に努めております(図6)。胆管細胞癌の場合、リンパ節転移を伴うこともあるので肝切除に加え、肝十二指腸間膜のリンパ節郭清も併施します。また肝門に浸 潤するタイプには胆管切除を併施します。標準的な肝臓がんでは肝機能を考慮して腹腔鏡下肝切除術を優先的に施行しています。

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   最近では手術より簡便な局所療法としてRFAが盛んに行われていますが,当院で肝臓がんに対する肝切除とRFA(ラジオ波焼灼療法)の治療成績を比較しました.当院外科および消化器内科で経験した1985年から2008年までの原発性肝細胞癌407例が対象です。全体としては肝切除の成績が良好で,5年生存率は76.8%です(生存率のグラフ参照).これはRFAでは高齢で,かつ肝機能が悪い症例が多く含まれることも原因と考えられます。腫瘍側の因子も重要なファクターです。つまり進行がんと早期がんが,どの割合で含まれるかによって治療成績は変わります。一般的に肝切除にくらべてRFAでは局所再発率が高いことが問題ですが,当科の検討でも肝機能(Child分類)が良好で,かつ早期の肝細胞癌に限って両治療法の再発率を比べたところRFAで優位に再発が多いことが判明しました(再発率のグラフ参照).ただし,先にも述べたように患者要因(年齢,合併症,肝機能)と腫瘍因子(進行度)に応じて,RFAあるいは肝切除を選択することが患者様のQOLに寄与することは確かなことです。

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膵臓がん

 膵臓がんは治りにくい癌腫のひとつです。周囲臓器、血管へ浸潤することが多く、受診時にすでに手術不能である方も多い疾患です。手術は腫瘍の位置によって膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除の二つに分けられます。膵頭十二指腸切除ではできるだけ幽門輪を温存する術式(PPPD)を選択しています。膵周囲の重要血管を合併切除・再建(つなぎかえ)することで切除率を向上させております。つまり膵頭十二指腸切除では門脈や肝動脈合併切除を、膵体尾部切除では腹腔動脈合併切除(DP-CAR)を行っております(図7-9)。膵臓がんは切除できても再発する方の多い疾患と言われております。最近膵臓がんにも効果があるといわれている抗がん剤もあり、可能な限り術後の補助化学療法も行っております。また,腹腔鏡下膵切除も良性から低悪性度(IPMN)の癌に限って積極的に施行しています。

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胆道がん

 胆道がんはその発生部位によって、胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんに分けられます。胆管は肝臓のなからから始まり膵臓の背側を通って十二指腸に至り、その部位によって肝門部(上部)、中部、下部胆管と分けられます。胆管は周囲には肝臓を栄養する肝動脈や門脈があり、とくに肝門部ではそれらが複雑に絡み合って、肝十二指腸間膜という脂肪の中に埋もれています(図10)。胆管は肝臓で作られた胆汁を十二指腸に運ぶ通り道です。胆管内にがんができると胆汁の流れが悪くなり黄疸が出現します。手術の前に黄疸を解消するために以前は経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を行ってきましたが、現在では内視鏡下胆道ドレナージ(ENBD)を行い患者さんの負担を減らすようにしております(図11a)。黄疸がある程度下がってから手術を行うようにしています。下部胆管や十二指腸乳頭部に発生したがんは基本的に膵頭十二指腸切除を行っておりますが、肝門部胆管にできたがんには胆管と広範囲の肝切除を行う必要があります。ただし肝臓の切除できる量は決まっていますので、大きく切除しないとがんが取りきれない場合は『経皮経肝門脈塞栓術』を行っております(図11b)。
これは手術の2~3週間前に、切除予定の肝臓内の門脈をエタノールとコイルという針金をつかって血流を落とし、手術後に残る予定の肝臓の体積をあらかじめ大きくしておき、術後の肝不全を予防することを目的としています。
胆嚢がんはその進行度によって手術が変わってきます。早期のものでは胆嚢摘出のみで十分ですが、進行して隣接した肝臓や十二指腸、リンパ節などにも癌が達しているときは切除の領域はもっと広くなり、拡大肝切除や膵頭十二指腸切除を併施する必要があります。広い範囲にわたり進展している胆管がんや胆嚢がんでは、その解剖学的特徴からHPD(Hepatopancreatoduodenectomy, 肝切除+膵頭十二指腸切除)や肝十二指腸間膜を完全切除するHL(Hepato-ligamentectomy, 肝切除+肝十二指腸間膜切除)、HLPD(hepato-ligamento-pancreatoduodenectomy, 肝+肝十二指腸間膜+膵頭十二指腸切除)という術式を行わないとがんの完全切除ができない症例があります(図12)。これらの手術は非常に難しく腹部外科最大の手術といえ、大学病院クラスでも症例数の少ない施設では安全かつ確実な手術ができない。当外科ではこれらの手術を積極的に行ってきており、市民病院クラスとしては本邦最多の症例数(2008年までにHPD40例、HL4例、HLPD7例)を誇ります。

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患者会のお知らせ

 乳癌で手術を受けられた患者さんのための「百合の会」が年に1回、6月に盛大に行なわれています。当乳腺外科の亀井先生と若手外科医が毎回出席してミニレクチャーも行っております。患者さんの出席者数は毎回50人前後で、患者さんの経験談、病気についての質問、講師を招いての勉強など、医師、看護師と一緒に情報交換を行ってより良い療養生活を目指しています。入会をご希望されるかたは、お気軽に外科外来の患者会担当者へご連絡ください。
大腸の病気あるいは膀胱の病気に対する手術によって人工肛門あるいは人工膀胱を保有する患者さん主体の『健康友の会』が復活しました。現時点では年一回(秋)開催で、患者/家族と当院のストマケア認定看護師、医師を囲んで日ごろのストマに関する問題点、心配事、病気のことなどを気兼ねなく話し合うことを目的としています。日本オストミー協会の岐阜県支部とも交友をもって本会を盛り上げていきたいと考えていますので、ご興味のある方は皮膚・排泄ケア認定看護師までご連絡ください。 おあおおおお