脳神経外科
脳神経外科の紹介
当院の脳神経外科は1976年に開設され、以来西濃医療圏で24時間365日対応可能な脳神経外科施設として皆様の診療にあたってきました。救急救命センターへ入院される脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)、頭部外傷をはじめとする救急疾患ばかりでなく、脳腫瘍、脊椎脊髄疾患、水頭症、小児脳神経外科疾患など脳神経疾患に対して幅広く対応しています。
脳神経外科の基本方針
安全な医療を最優先に患者さん中心の医療を心がけています。脳腫瘍の手術では脳神経外科手術用ナビゲーションシステムや術中電気生理学的モニターを活用して術後の合併症を防げるようにしています。下垂体手術には神経内視鏡を使用して低侵襲の手術に努めています。ガンマナイフなどの定位放射線治療が必要な脳腫瘍の患者さんには、術後ガンマナイフのある病院へご紹介させて頂いております。近年血管内手術がめざましく発達してきております。当院では脳動脈瘤の手術に際しては開頭術と血管内手術、それぞれの適性を考慮して個々の症例に対して最適な治療を選択して提供しています。
脳卒中や頭部・脊髄外傷後の高度痙縮によりQOLが低下している患者さんに対して内服加療で効果が不充分な場合には脊髄への薬剤の持続注入治療(ITB療法)やボトックス治療を行っています。
スタッフ紹介
- 槇 英樹
役職 | 脳神経外科 部長 |
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卒業大学名 医師免許取得年 |
自治医科大学 1990年 |
専門医資格(その他) | 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本神経内視鏡学会技術認定医 日本臨床神経生理学会 |
専門分野 | 脳腫瘍、頭蓋底手術 内視鏡手術 |
- 野田 智之
役職 | 脳神経外科 医長 |
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卒業大学名 医師免許取得年 |
金沢大学 2000年 |
専門医資格(その他) | 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本脊髄外科学会 |
専門分野 | 脳血管障害の外科的治療 背髄疾患治療 |
- 今井 資
役職 | 脳神経外科 医長 |
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卒業大学名 医師免許取得年 |
筑波大学 2008年 |
専門医資格(その他) | 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医 日本脳卒中学会専門医・指導医 |
専門分野 | 脳血管内治療 |
- 川端 哲平
役職 | 脳神経外科 医長 |
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卒業大学 医師免許取得年 |
名古屋大学 2010年 |
専門医資格(その他) | 日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医 日本脳卒中学会専門医 日本神経内視鏡学会技術認定医 脳血栓回収療法実施医 |
専門分野 | 内視鏡手術 |
- 雄山 隆弘
役職 | 医員 |
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卒業大学名 医師免許取得年 |
三重大学 2014年 |
専門医資格(その他) | 日本脳神経外科学会専門医 脳血栓回収療法実施医 日本脊髄外科学会認定医 |
専門分野 | 一般脳神経外科 |
- 脇坂 憧子
役職 | 医員 |
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卒業大学名 医師免許取得年 |
聖マリアンナ医科大学 2019年 |
専門医資格(その他) | |
専門分野 | 一般脳神経外科 |
診療実績
脳神経外科の2022年の入院患者数は848人、手術件数は355件、病棟病床数は31ですが救急救命センターや集中治療室の病床も利用しています。
入院患者疾患 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 |
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脳腫瘍 | 57 | 73 | 82 | 117 | 78 |
脳動脈瘤 | 61 | 61 | 55 | 86 | 84 |
脳出血 | 184 | 182 | 152 | 178 | 171 |
閉塞性脳血管障害 | 187 | 192 | 187 | 99 | 72 |
頭部外傷 | 213 | 269 | 304 | 270 | 225 |
脊椎・脊髄疾患 | 4 | 7 | 4 | 2 | 5 |
その他 | 137 | 102 | 71 | 106 | 77 |
総計 | 848 | 886 | 855 | 858 | 712 |
2022年 | 2021年 | 2020年 | |
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手術 | 355 | 384 | 388 |
脳動脈瘤手術 | 46 | 37 | 41 |
開頭動脈瘤クリッピング術 | 28 | 25 | 28 |
(high flow bypass) | (0) | (2) | (0) |
動脈瘤コイル塞栓術< | 18 | 12 | 13 |
脳腫瘍手術 | 29 | 49 | 56 |
神経膠腫(膠芽腫など) | 7 | 10 | 6 |
髄膜腫 | 4 | 10 | 13 |
(頭蓋底髄膜腫) | (2) | (3) | (6) |
下垂体腫瘍(経鼻内視鏡手術) | 5 | 10 | 10 |
頭蓋咽頭腫 | 2 | 2 | 2 |
聴神経腫瘍 | 1 | 0 | 1 |
悪性リンパ腫 | 5 | 7 | 2 |
そのほかの原発性脳腫瘍 | 4 | 2 | 7 |
転移性脳腫瘍 | 1 | 8 | 15 |
頭蓋骨腫瘍摘出術 | 3 | 0 | 1 |
脳出血手術 | 15 | 24 | 20 |
開頭血腫除去術 | 3 | 9 | 12 |
内視鏡下血腫除去術 | 12 | 15 | 8 |
脳動静脈奇形摘出術 | 1 | 5 | 3 |
頸動脈狭窄症手術 | 22 | 13 | 18 |
頸動脈内膜剥離術(CEA) | 8 | 5 | 6 |
頸動脈ステント留置術(CAS) | 14 | 8 | 12 |
浅側頭動脈・中大脳動脈吻合術 | 0 | 3 | 1 |
血栓回収療法 | 31 | 31 | 34 |
硬膜動静脈瘻塞栓術 | 4 | 4 | 4 |
その他の血管内手術 | 4 | 1 | 3 |
頭部外傷手術(開頭血腫除去術) | 15 | 16 | 15 |
急性硬膜下血腫 | 8 | 7 | 10 |
急性硬膜外血腫 | 4 | 4 | 2 |
脳挫傷 | 3 | 5 | 3 |
微小血管減圧術 | 4 | 2 | 1 |
顔面けいれん | 2 | 1 | 1 |
三叉神経痛 | 2 | 1 | 0 |
水頭症手術 | 12 | 21 | 19 |
脳室・腹腔短絡術(V-Pシャント) | 10 | 20 | 19 |
第3脳室底開窓術(ETV) | 2 | 1 | 0 |
脊髄腫瘍手術 | 1 | 0 | 0 |
小児奇形手術 | 1 | 0 | 0 |
慢性硬膜下血腫手術 | 148 | 119 | 129 |
脳室ドレナージ術 | 13 | 14 | 8 |
その他 | 6 | 45 | 35 |
論文と学会発表
2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | |
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学会発表数 | 12 | 15 | 11 | 16 | 15 |
論文数 | 3 | 3 | 4 | 0 | |
著書数 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 |
脳卒中の治療について
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は脳卒中の代表的な疾患です。脳卒中という言葉は突然に起こる脳の病気という意味です。即ち脳の血管の病気を意味します。ほとんどの脳卒中は何ら前触れなく起こります。
脳卒中の内で脳神経外科が主に治療に当たるのは出血性疾患、即ちくも膜下出血と脳出血です。当院では脳梗塞の急性期は主として神経内科が治療に当たります。いずれの診療科においても「脳卒中治療ガイドライン2015」に準拠した治療を行っています。
脳動脈瘤に対する開頭手術と血管内手術について
くも膜下出血の原因である脳動脈瘤に対して開頭手術と開頭を行わずに血管の中から治療する方法があります。どちらの治療法にも長所と短所があります。
当院では症例ごとに開頭手術に熟練した脳神経外科専門医と血管内治療専門医とでどちらの治療法に優位性があるかを協議した上で患者さんの意向を踏まえて治療法を決定しています。
頚部内頚動脈狭窄症に対する治療について
頚部で脳へ行く血管が細くなり脳梗塞の原因になる場合があります。新たな脳梗塞が起こることを防止するために動脈の狭窄を治す治療法があります。これには手術による方法と血管内からカテーテルを使用して治療する方法があります。これらにも上記の動脈瘤の治療と同様それぞれに長所と短所があります。当院では手術に熟練した脳神経外科専門医と血管内治療専門医とで協議をした上で患者さんの意向を踏まえて治療法を決定しています。
頭部外傷に対する治療について
当院では日本神経外傷学会編集「重症頭部外傷治療・管理のガイドライン 第3版」に準拠して治療を行っています。
脳腫瘍の治療について
当院では日本脳神経外科学会監修「脳腫瘍診療ガイドライン(2016年版)」及び名古屋大学脳神経外科 吉田純監修「悪性脳腫瘍治療ガイドライン(2007年度版)」に準拠して治療を行っています。手術に際しては脳神経外科手術用ナビゲーションシステム、神経内視鏡、レーザー手術装置、超音波吸引装置、神経電気生理学的モニター等の最新の機器を用いて安全な手術を行うことに努めています。
当院が日本脳卒中学会認定「一次脳卒中センター(PSC: primary stroke center)」に2019年9月に認定されました
日本脳卒中学会が定める一次脳卒中センターの認定要件としては
(1) 地域の医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後、可及的速やかに診療(rt-PAを含む)を開始出来る。
(2) 頭部CTまたはMRI検査、一般採血検査と凝固検査、心電図が施行可能である。
(3) 脳卒中ユニット(SU)を有する。
(4) 脳卒中に従事する医師(専従でなくてもよい、前期研修医を除く)が24H/7D体制で勤務している。
(5) 脳卒中専門医1名以上の常勤医がいる。
(6) 脳神経外科的処置が必要な場合、迅速に脳神経外科が対応出来る体制がある。
(7) 機械的血栓回収療法が出来ることが望ましい。実施出来ない場合には血栓回収脳卒中センターや包括的脳卒中センターとの間で、機械的血栓回収療法の適応となる患者の緊急転送に関する手順書を有する。
(8) 定期的な臨床指標取得による脳卒中医療の質をコントロールする。
が挙げられています。
当院は救急病棟(HCU)に2床の脳卒中ユニットを有しています。脳神経外科医7名、救急部医師3名、神経内科が協力し、24時間365日t-PAがいつでも投与出来る体制を整えています。また、緊急の機械的血栓回収療法は脳神経血管内治療専門医を中心とし、2020年は34件、2021年は26件と岐阜県トップクラスの治療件数を誇ります。
当院では、慢性硬膜下血腫の手術に際して、名古屋大学脳神経外科で行っている臨床研究「慢性硬膜下血腫の際の血腫腔洗浄が再発率に与える影響に対する研究」に参加しています。これは、手術方法として血腫腔を洗浄するかしないかで無作為に振り分けを行い、再発率や合併症について検討する研究です。対象となる患者さんには、手術前に説明し、参加の意向をお尋ねします。参加を希望しない場合は、病状により手術の方法を選択します。
脳梗塞のみならず、くも膜下出血、脳出血に対する治療にも非常に力を入れています。
くも膜下出血については開頭手術とカテーテル治療を、脳出血については開頭手術と内視鏡手術を上手く使い分け、
患者さんにとって最適な治療を提案しています。