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消化器内科

消化器内科の紹介

 消化器科は昭和38年に発足以来約40年の歴史があります。
発足以来人数は増えて、十数人の人員で診療しています。
入院患者のベット数は94床、外来には5つの診察室があります。病院では最もたくさんの患者様を診察しており、年間の新入院患者数は約2100人で、消化器系全般にわたる診療を行っています。

基本方針

 消化器科の扱っている臓器は消化管(食道、胃、小腸、大腸)、肝臓、膵臓、胆道と多岐にわたっており、単一臓器のみに目を向けるのではなく、各臓器間の関連を重視しながら総合的に診療にあたっています。
国内外の学会および研究会には常に参加・発表し、最先端の知識および技術を導入して常に患者様に還元できるように努力しています。
また根治を期待できない癌の患者様にはQuality of life(QOL)を考慮した全人的治療を行っています。

スタッフ紹介

熊田 卓
熊田 卓 部長
役職 副院長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
昭和52年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本肝臓学会
日本超音波医学会
専門分野 肝疾患
IVR
桐山勢生
桐山勢生 医長
役職 主任部長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
昭和59年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
専門分野 胆、膵疾患
谷川 誠
谷川 誠 医長
役職 部長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
昭和61年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
専門分野 胆、膵疾患
久永康宏
役職 部長
卒業大学名
医師免許取得年
三重大学
平成2年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
専門分野 消化管疾患
豊田秀徳
豊田秀徳 医長
役職 部長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成2年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本肝臓学会
日本内科学会
専門分野 肝疾患
IVR
金森 明
金森 明 医長
役職 医長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成9年
専門医資格(その他) 日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本超音波医学会
専門分野 胆、膵疾患
多田俊史
役職 医長
卒業大学名
医師免許取得年
島根医科大学
平成9年
専門医資格(その他) 日本内科学会認定内科医
日本超音波医学会
日本静脈経腸栄養学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本肝臓学会
専門分野
北畠秀介
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役職 医長
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成9年
専門医資格(その他)
専門分野
山剛基
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役職 医長
卒業大学名
医師免許取得年
鳥取大学
平成15年
専門医資格(その他) 日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本肝臓学会
専門分野 消化器病
水野和幸
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋大学
平成22年
専門医資格(その他) 日本内科学会認定内科医
専門分野
東堀 諒
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
鳥取大学
平成23年
専門医資格(その他)
専門分野
犬飼庸介
役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
名古屋市立大学
平成24年
専門医資格(その他)
専門分野
竹田尭
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
藤田保健衛生大学
平成24年
専門医資格(その他)
専門分野
佐久間理香
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
藤田保健衛生大学
平成26年
専門医資格(その他)
専門分野
風呂井学
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
岐阜大学
平成27年
専門医資格(その他)
専門分野
三宅 望
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役職 医員
卒業大学名
医師免許取得年
岡山大学
平成26年
専門医資格(その他)
専門分野

手術症例

診療実績

 2012年2013年2014年2015年2016年
切開剥離法(ESD) 42 89 84 101 133
下部ポリペクトミー 995 1049 1113 1103 1276
肝動脈化学塞栓治療(TACE) 100 123 132 115 133
ラジオ波焼灼治療(RFA) 120 108 111 73 55
内視鏡的総胆管結石砕石術 125 115 125 114 144

学会発表

2015年2014年2013年2012年2011年
国内学会・研究会発表 62 31 43 52 39
国際学会発表 0 0 5 0 0
論文(原著を含む) 14 10 12 18 20

治療方針

(1)消化管(胃腸)

 消化管では上部内視鏡検査は約7500件、下部内視鏡検査は約2000件と総数約9500件の内視鏡検査を行っています。上部内視鏡検査には「経鼻内視鏡」を導入し、患者様の希望に応じて苦痛ができる限り少ない検査を行っています。
最近は診断だけではなく、低侵襲(体に負担の少ない)手術として上部および下部で内視鏡的粘膜切除(EMR)の占める割合が増加しています。
特にITナイフを使用した早期胃がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は早くから取り入れて行っており総数も400例を超すまでになっています。ESD施行時には常に他病院からの見学者が絶えず東海地方では中心的な役割を果たしています。
また消化管出血の内視鏡的止血術は昼夜を問わず行っており、止血ができなくて開腹手術に至る例はほとんどありません。
潰瘍再発防止目的および胃がんの予防のためにヘリコバクター・ピロリの除菌も1500人以上に行っています。ファーストライン(初回)治療無効例に対してもセカンドライン(薬を変更しての再治療)の治療も行っています。95%以上の潰瘍の患者様の除菌に成功しています。
近年、新しい抗癌剤が多数発売されました。手術適応のない胃癌・大腸癌の進行例に対する化学療法も最新の情報を取り入れながら積極的に行い、効果をあげています。

(2)肝臓

 外来では慢性肝炎を約1500人、肝硬変を約200人、肝細胞がんを約300人治療しています。
C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療の経験は約1200例を越えました。
最近では週1回の注射でよい徐放型のペグインターフェロン(商品名:ペグイントロンもしくはペガシス)とリバビリン(商品名:レベトールもしくはコペガス)を用いた治療を行い、難治性の1B型・高ウイルス量のC型慢性肝炎に対しても48週から72週の治療で50%前後が治癒しています。また2型のC型慢性肝炎の患者様はこの治療を24週行うことで80から90%の患者様に治癒が得られています。治癒が得られれば肝細胞がんになることはきわめて少なくなります。リバビリンを使用できない方にはペグインターフェロン(商品名:ペガシス)の単独投与も行っています。ウイルスの排除を期待できない患者様にはインターフェロンの少量長期治療も行い、肝硬変への進展、肝細胞癌へ進展を抑制する治療を行っています。
一方、B型肝炎は700人以上の患者様を診療しており年齢が若ければ(35歳未満)、インターフェロンの投与を、35歳以上ではエンテカビル(商品名:バラクルード)の投与を主体として行っています。エンテカビルは変異株の出現が少ないので大変効果があり、治療の開始が遅れなければ、肝硬変に進行することはほとんどなくなり、肝細胞がんの発生も抑制します。B型肝炎の大多数(85から90%)の患者様は無症候性キャリアで治療も必要ありませんが、低率ながらも肝発がんの危険性があるので、半年に1回定期的に採血と画像診断を行って早期発見に努めています。
当消化器科ではウイルス肝炎に対しては常に新しい薬剤の臨床試験を行っており(C型慢性肝炎に対する蛋白阻害剤の併用試験など)、常に最先端の治療ができる環境にあります。これらの薬剤が保険収載されればほとんどのC型肝炎が治癒する時代になることが期待できそうです。
ウイルス性の肝硬変に対しては臨床試験として一部の方にインターフェロンの投与を行っています。また栄養管理を主体とした治療にも取り組んでいます。
肝細胞がんは今までに2200例を超える経験があります。高危険群(ウイルス性慢性肝炎とウイルス性肝硬変)を定期的に画像診断(超音波検査は3~6ヶ月に1度、CT・MRIは6~12ヶ月に1度)と腫瘍マーカー(αフェトプロテイン[AFP]、AFPレクチン分画[L3]、PIVKAⅡ)の測定を行っており当院で発見される肝細胞がんの大多数は2cm以下となっています。最終的な診断はCTと血管造影が一体となった血管造影装置(IVR-CT)を用いて行っています。(肝細胞癌に関しては別途記載)。
治療方針の決定は外科医と定期的にミーティングを開いて、肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術などどの治療を行うのかを決定しています。高度進行例では体内にカテーテルを留置しリザーバーから抗癌剤を注入する動注化学療法を積極的に行い成績も向上してきています。
最近の食事事情の変化により生活習慣病である脂肪肝が急速に増加しています。600人以上の脂肪肝を治療していますが、最近では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目を集めてきています。NASHは進行して肝硬変、肝細胞癌の発生に至る場合があることが知られています。NASHの診断のために造影剤を使用した超音波(副作用はほとんどありません)や肝生検を行い積極的に治療介入も行っています。

(3)膵臓・胆道

 膵・胆道系で最も多い疾患は胆石症です。多くの場合は無症状で、地域連携も行なって外来にて超音波検査などで経過観察を行なっています。しかし、胆管結石は腹痛、黄疸や発熱をきたし、時には敗血症となって危険な状態に陥ることもあります。
このような患者さんに対しては現在までに1000例以上の多数の内視鏡的乳頭切開術、乳頭バルーン拡張術を行ない、手術を行なわずに治療を行っています。胆のう結石のある患者様はのちに胆のうを腹腔鏡でとる手術を外科で受けていただいています。
急性膵炎は重症化するとショックとなり肺、腎などの全身の臓器を傷害し、生命を脅かす重篤な疾患となります。豊富な症例の蓄積・経験に基づいて動注療法や血液透析を含む集学的治療を行ない、致死率の高い重症膵炎の患者を救うべく努力しています。
慢性膵炎は慢性の炎症により膵組織の荒廃をもたらし、腹痛や消化吸収障害あるいは糖尿病の合併などがみられ、まずは内科的治療が行なわれますが、近年では膵管狭窄に対する内視鏡的治療や膵石症に対するESWL療法なども行なっています。
全国的にも有数の多くの救急外来患者の診療を行なっている臨床病院の一つとして、急性膵炎や急性胆嚢炎・胆管炎のガイドライン作成に参加し、また厚生労働省の「難治性膵疾患調査研究班」による研究にも、以前からその協力者として参加しています。
膵癌や胆嚢癌などの膵・胆道系の悪性腫瘍は、残念ながら現在においても予後の不良な疾患とされていますが、最新の画像診断法を用いることにより体系的かつ合理的に診断、治療を行い、当院外科とも連携して治療成績の向上に努めています。切除不能な患者さんの場合、疼痛に対する緩和療法とともに、胆道狭窄をきたして黄疸をきたすことも多いため、積極的にステントなどによる内瘻術を行って、QOLを上げるように努めています。

肝細胞癌

 大垣市民病院消化器科では多数の肝細胞癌*の患者様診療しております。その経験数は平成20年12月現在で2200人を超えております。ここに肝細胞癌の発生頻度、原因、早期発見、治療法、治療成績を当院のデータを中心として示します。
*:肝臓から発生する癌には肝細胞から発生する「肝細胞癌」と肝内胆管から発生する「肝内胆管癌(胆管細胞癌)」があります。前者が大多数を占めますので肝細胞癌について示します。

1.発生頻度

 日本における肝癌(肝細胞癌と肝内胆管癌を含む)の死亡率は最近では3万5千人前後であり、肺癌、胃癌、大腸癌に次いで4番目の死亡数となっています(図1)。

図1、本邦における肝癌の死亡者数
図1、本邦における肝癌の死亡者数

 大垣市民病院消化器でも年間80人から90人くらいの新しい患者様が来院されますが最近10年間は横ばいとなっています(図2)。

図2、肝細胞癌の推移(2367人)
図2、肝細胞癌の推移(1931人)

2.原因

 肝細胞癌を発生する患者様の原因はほぼ決まっています。

図3、肝細胞癌の成因(867人)
図3、肝細胞癌の成因(867人)

 ウイルス性肝炎(B型、C型)の患者様の占める割合は90%です。1996年から2005年までの10年間に新しい肝細胞癌の患者様を867人診察しましたが、B型肝炎が137人(15.7%)、C型肝炎が639人(73.7%)を占め、B型でもC型でもない患者様(非B非C型)は91人(10.5%)のみでした。しかし最近ではメタボリック症候群によく見られる脂肪肝(特に非アルコール性脂肪肝炎:NASH)を基礎にした肝細胞癌の発生が増加してきており、注意が必要です。

3.肝炎の自然経過

 それでは、肝細胞癌の主な原因であるB型肝炎とC型肝炎の自然経過を示します。
B型肝炎キャリア(6ヶ月以上B型肝炎ウイルス[HBV]を保有)の患者様は日本に150万人前後いるとされています。国の政策で主な感染ルートである母子感染予防の対策が確立してからはB型肝炎キャリアの発生率は激減しています。通常、B型肝炎キャリアが成立するためには0~3歳までの感染が必要とされています。B型肝炎キャリアの多くは若い時期は不顕性で、思春期以降に発症することが多く、10~15%が慢性肝炎に、85~90%は無症候性HBVキャリアに移行します(図4)。慢性肝炎は早期の時期に医療機関にかかり適切な治療を受ければ肝硬変、肝細胞癌へ移行する頻度は極めて少なくなりました。インターフェロンもしくは核酸アナログ(バラクルード、ヘプセラ、ゼフィックス)をうまく使用すれば、完治はありませんが進行を抑えることが可能となりました。無症候性HBVキャリアはウイルス量が低ければ治療は必要としませんが、低率ながらも肝細胞癌の発生の危険がありますので半年に1回の採血(肝機能、腫瘍マーカー)と画像診断(超音波検査など)が必要です。

図4、B型肝炎キャリアの自然経過
図4、B型肝炎キャリアの自然経過

 最近では遺伝子のタイプがA型のB型急性肝炎(ヨーロッパ型)が急増しており、この場合は成人にかかっても慢性化(キャリア化)する危険性があるとされていますので注意が必要です。

一方C型肝炎キャリアは全国に170万人から200万人いるとされています。B型肝炎とは違って、いつの時期に感染しても高率に慢性化し(80%前後)、その一部が肝硬変、肝細胞癌となります(図5)。ペグインターフェロンとリバビリンの併用治療で高率に治癒するようになりましたが、治癒しなかった患者様は病気の進行を抑える治療(ウルソ、強力ミノファーゲンC、小柴胡湯、瀉血、インターフェロンの少量長期など)が必要となります。また、たとえALT(従来はGPTと言われた、肝細胞が壊れると血液の中に遊出してくる酵素)が正常(基準値内)であっても、一部の患者様で肝細胞癌に進行することがわかってきましたので、積極的にウイルスに対する治療を行うことが推奨されています。

図5、C型肝炎の自然経過
図5、C型肝炎の自然経過

4.早期発見

 肝細胞癌が発生する人はその多くが肝臓にウイルス性肝炎を持っている人となります。従って高危険群(肝細胞癌の発生しやすい人)が明らかです。高危険群のうちB型・C型慢性肝炎は落ち着いていれば3ヶ月に1度の血液・腫瘍マーカーの検査、半年に一度の画像診断(超音波検査、CT、MRI)を行います。さらに危険の高いB型・C型肝硬変では少なくとも3ヶ月に1度の血液・腫瘍マーカーおよび画像診断の検査を行い早期に発見するように心がける必要があります。原因の如何を問わず肝硬変、前述した脂肪肝(特にNASH)の繊維化進行例も高危険群として定期的に検査を受けていただく必要があります。
腫瘍マーカー(肝細胞癌ができると血液の中で上昇する)にはアルファフェトプロテイン(AFP)、AFPレクチン分画(AFP-L3)、PIVKAⅡ(ピブカⅡ、異常プロトロンビン)の3種類があります。ある程度サイズが大きくならないと血中に上昇しないことが多く、早期診断には向いていませんが、後述する画像診断でわかりにくい症例には威力を発揮します。
画像診断には超音波検査、CT(多数の検出器を備えて高速撮影が可能となった、MDCTと呼ばれる)、MRI(放射線被曝がない、肝細胞に取り込まれる造影剤プリモビストが出現して診断能は飛躍的に向上した)があります。通常は、簡便な超音波検査を定期的に行いますが、超音波ではみえない部位(死角)があるのでMDCTもしくはMRIを適宜加える必要があります。超音波検査にも造影剤(ソナゾイド)が出現して簡便で感度の高い検査ができるようになりました(造影剤でも副作用がほとんど無いことが利点です)。現在のところ肝細胞癌を早期(小さな時期)に発見するには、これらの画像診断が最も威力を発揮し、2cm以下の肝細胞癌が発見されることは稀ではなくなってきました。

5.治療成績

図6、肝臓がんの早期発見のこつ
図6、肝臓がんの早期発見のこつ

 肝細胞癌の治療を行うにあたって重要なポイントがあります。
前から述べてきましたように、肝細胞癌ができる人のほとんどは元にB型・C型肝硬変もしくはB型・C型慢性肝炎をもっています。特に肝硬変の人には糖尿病、腹水、肝性脳症(肝臓で体内にできた毒物か分解されないために意識状態が悪くなる)、静脈瘤(肝臓が堅くなることで本来は肝臓の中にはいるべき血液がバイパスを通って流れ、静脈が食道や胃の表面を通る。大出血の原因となる)などの合併症が多く見られますので、これらに気を使いながら治療する必要があります(図7)。

図7、日本人の肝細胞癌を鏡餅になぞらえると
図7、日本人の肝細胞癌を鏡餅になぞらえると

 この様に癌を治療すると元の肝臓が悪化してしまう危険があるので肝機能を十分に評価して治療する必要があります。このとき使用される肝機能の指標にChild-Pugh分類があります(図8)。

図8、Child-Pugh分類(肝機能)
図8、Child-Pugh分類(肝機能)

肝性脳症、腹水、血清ビリルビン(黄疸の指標)、血清アルブミン(たんぱく質の1種)、プロトロンビン活性値(血液の凝固する能力)の5つの因子に点数を付けて評価する簡単な指標ですが、大変有益です。Child-Pugh AもしくはBの一部は積極的な治療の対象となります。
当然、肝機能の良い人は治療したあとに長く生きていただくことができます。Child-Pugh Aであれば5年生存率は約50%です(図9)。

図9、Child-Pugh分類別の生存率
図9、Child-Pugh分類別の生存率

 また、肝細胞癌は通常の癌と同じように早く発見されれば治療により長く生きていただくことができます。肝細胞癌の進行度はステージ(日本肝癌研究会)として分類されます(図10)。

図10、ステージ分類(腫瘍の進行度)
図10、ステージ分類(腫瘍の進行度)

 ステージⅠで発見され治療を開始すれば5年で約60%の生存率が得られます(図11)。

図11、ステージ分類別の生存率
図11、ステージ分類別の生存率

図12、JISスコアー
図12、JISスコアー

 肝細胞癌には肝機能(Child-Pugh分類)と進行度(ステージ分類)を組み合わせたJISスコアーというものも提唱されています(図12)。
これはChild-Pugh分類とステージ分類に単数を付けて0から5点の6群に分けてどれだけ生存可能かを予測するものです。0点であれば5年生存率は約80%、1点であれば5年生存率が約50%です。しかし点数が5点の場合は50%生存が1-3ヶ月で極めて予後が悪くなっています(図13)。

図13、JISスコアーと生存率
図13、JISスコアーと生存率

6.肝細胞癌の治療法

 肝細胞癌には図14に示しましたようにいろんな治療があります。治療効果が期待できる可能性の高いのは肝切除、ラジオ波治療(RFA)、肝動脈塞栓術です。これらの治療が適応とならない場合にはリザーバーによる動注化学療法、全身化学療法、放射線治療を行いますがいずれも基礎にある肝疾患の程度(肝機能)によって行うべきかどうかが決められます。

図14、肝細胞癌の治療
図14、肝細胞癌の治療

 「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班」(2005年)作成の肝癌治療アルゴリズムではまず肝機能によって分類し、肝障害度Cでは肝移植もしくは緩和医療が適応となっています(図15)。

図15、肝細胞癌治療のアルゴリズム
図15、肝細胞癌治療のアルゴリズム

7.肝細胞癌の再発

 肝細胞癌は最初にできた癌をきちんと治療しても高い頻度で再発します。これは癌の治療をしても、元にあるB型肝炎・C型肝炎は治らないため、また新しく癌が出てくるためと考えられます。通常の癌は癌を十分に取りきれなかった(コントロールできなかった)場合に再発してくるだけなのですが、肝細胞癌の場合はこれに加えて新しく癌ができてくるため高い頻度となります。いわば肝細胞癌の治療は「モグラたたき」の状態になるわけです(図16)。では、このモグラたたきの状態から脱却するのは難しいのでしょうか?

図16、肝細胞癌の再発とその治療

 前にも書きましたように肝細胞癌の再発は、初回の治療で十分コントロールできなかったための再発(肝内転移:IM)と初回の治療が十分であったが別のところに新しく癌ができてくる再発(多中心性発生:MO)の2種類があります。小さな時期に発見されれば、初発の病巣を完全にコントロールできることが多く、その後のMO再発が多くなります。治療開始からおおよそ3年くらいはIM再発とMO再発の両方を生じますが、3年を過ぎるとMO再発が主体となります。このMO再発を抑えることも他の癌とは異なり肝細胞癌では重要となります(図17)。B型肝炎では核酸アナログの投与が肝細胞癌の発生を減らすとともに、肝機能も改善するために次回の治療が受けやすくなると考えられています。一方、C型肝炎に対してはインタフェロン(少量長期を主体に)、強力ミノファーゲンC、ウルソの投与が肝臓の炎症を抑えて二次発癌の頻度を低下させるとして期待されています。

図17、肝細胞癌の再発
図17、肝細胞癌の再発

8.おわりに

 肝細胞癌は以下の特徴を有しています。

  1. できる人が決まっている。
  2. 元にある肝障害の程度(肝機能)により治療法が制限される。
  3. 初発の癌を完全に治療しても新しく癌ができやすい。
  4. 長く生存するためには元の肝臓の病気の治療も重要である。

などです。

 いろんな要素が有り、的確な判断を必要とする癌のため大垣市民病院消化器科を含めた専門的な施設での治療をお勧めします。