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院内がん登録患者の累積生存率

(がん診療委員会からの報告 2010年11月)

 がん診療連携拠点病院の大きな業務である院内がん登録がはじまって5年以上が経過した.当院では独自に開発したデータベース(各診療科が保有するファイルメーカー)に基づき各科の医師が責任をもって癌患者の初期入力をして,これを院内癌登録実務者(医療クラーク)が国立がんセンターが管理する院内がん登録ソフトへ入力するシステムをとっている.このシステムは各診療科がデータベースを正確に作り上げることにその信頼度が依存している.
 当院では院内がん登録専属の医療クラークが2名いる.彼女らが中心となって今回の,日本国内でも例を見ない,院内癌登録患者の癌種別累積生存率(Kaplan-Meier法)を算出することが可能となった.
 厚労省が推し進める院内がん登録は,日本全国の病院での癌治療の実際(癌患者数)と,その治療成績(生存率)を公表して医療レベルの均てん化を図ることが目標であり,さらに癌治療のレベルアップが期待される.市民は癌にもっと興味をもつべきであり早期診断によって癌は治りうる病気であることを普及していかなければならない.その意味でも全国にさきがけて院内がん登録全患者の累積生存率を公表することは意義深いと言える.
 今回は手術,抗がん剤等の治療別の成績ではなく,あくまでも早期癌から進行癌まで,かつ手術例もあれば無治療例も含まれているので一般的に公開されている生存率より低い数値であることを付言する.また当院では高齢者や合併症を有する患者,さらに超進行癌に対しても積極的に癌治療をしていることも生存率に影響を及ぼしているだろう.
 一般的に生存率にバイアスを与える因子としては,
1) 癌の種類と治療法 2)癌の進行度(stage) 3)患者の年齢,性 4)合併症の有無 5)癌が診断されるまでの期間と治療を開始するまでの期間 などがある. 生存率を計算するためには患者の生存確認(死亡の場合は死亡日)が必要であり,転院,転居などでその確認は困難なことも多い.当院での生存確認の手法を簡単にまとめると,
 1)電子カルテのデータベースより「死亡」を入力して抽出する. 2)生存は「入院中」または「最終来院日」を入力して抽出. 3)以上で確認ができない場合は電子カルテ内の診療情報等から患者情報を手作業でひろいあげ転院の場合は転院先に「生存確認調査票」を郵送した.今回は100施設227件を郵送にて安否確認した(85施設205件の回答で生存61,死亡106,不明60).

1.予後調査結果

 消息不明数が多いほどその結果の信頼性は低くなる.なぜなら生存率に必要な生存と死亡の実数が少なくなるからである.今回の検討では胃癌,大腸癌などの消化器がん,乳癌では10%内外であったが,前立腺がん,子宮頚部がん,皮膚癌で不明数が多かった.(不明数を減らすための住民台帳利用等の法整備が必要である.)

予後調査結果 [PDF:47KB]

2.院内がん登録患者の累積生存率

 各種がん診断後1年から5年までの1年ごとのKaplan-Meier法による累積生存率を記載する.先に述べたように,今回の生存率は癌腫ごとの全生存率であり,当院での治療成績を示しているわけではない.治療成績を示すためには各がんの進行度と治療内容を層別化しなくてはいけない.今回の報告は癌の悪性度がどれぐらいであるかの指標と考えてもらえばよい.一般的には癌が治癒する確率が5年生存率で示されている.(頭頚部癌であれば5年生存率が50%)

院内がん登録患者の累積生存率 [PDF:56KB]