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五大がん - 乳がん

1.乳癌とは

1)統計

我が国では毎年約3万人の女性が乳癌にかかり増加傾向にあります。1994年以降は胃癌をぬいて女性の癌の中では第1位になりました。それに伴い乳癌が原因で亡くなる方も増加し2004年には1万人を超えました。好発年齢は40歳代で、家庭や子供たちにとって大切な人を奪う病気です。

2)組織分類

乳癌は、浸潤癌と非浸潤癌に分けられます。最初は、すべて非浸潤癌ですが、そのまま浸潤癌にならずに長く非浸潤癌のままとどまるものもあります。

3)治療の概略

乳癌の治療は、その進行度にあわせて、外科的療法、薬物療法、放射線療法を用います。

4)原因

乳癌は他の癌と同様にさまざまな原因で遺伝子に傷がつくためになるといわれています。生活様式や社会様式の欧米化が関係しているようです。

5)検診

女性の癌のなかで最も多い癌なので、厚生労働省も乳癌検診には力を入れています。40歳以上の女性を対象として触診とマンモグラフィ併用の住民検診が各自治体で行われています。

2.症状

乳癌の症状として最も多いものは、乳房のしこりです。その他には、皮膚の陥凹、乳頭のただれ、乳頭からの異常分泌物などがあります。しかし、現在では自覚症状のない検診で発見される乳癌が増えてきています。

3.診断

1)視触診

医師が診察して、しこりの有無、症状の有無を調べます。

2)マンモグラフィ

乳房専用のレントゲン検査です。乳房を器械ではさんでレントゲンを撮ります。自覚症状のない乳癌を発見することもできます。現在、乳癌検診には最も有効な検査であるとされていますが、すべての乳癌を発見できるわけではないので、触診もしくは超音波検査とともに行うのが理想的です。

3)超音波検査

乳腺超音波検査は、受ける人の苦痛が少なく、体への害もないのが特徴です。特に若くて乳腺の量が多い方ではマンモグラフィで見つからない小さい癌を発見できることもあります。ただし、ひとくちに乳癌といってもマンモグラフィでみつけやすいものもあれば、超音波検査の方がみつけやすいものもあり、両方の検査を行うのが理想的です。

4)穿刺吸引細胞診検査

しこりを超音波で見ながら細い針で刺して細胞を取ってくる検査です。針は皆さんが採血の時に使うのと同じ太さの針ですので、採血の痛みに耐えられる方でしたら心配は要りません。

5)針生検

穿刺吸引細胞診を行っても診断がつかない場合に行います。細胞診検査とは異なり組織(細胞の固まり)を採ってくるので少し太い針を使います。もちろん、痛くないように局所麻酔を行います。

6)切開生検

針生検でも診断がつかない乳癌が時にあります。このようなときには、メスで皮膚を切ってしこりを切除して診断します。以前は、比較的よく行われていましたが、最近ではその後の治療の妨げになる場合もあるのでなるべく避ける傾向にあります。

4.病期分類

病巣の程度によって0~Ⅳ期に分類されます。

0期: 乳管上皮に限局している段階で非浸潤癌と言われています。
Ⅰ期: しこりの大きさが2cm以下で、他への明らかな転移も認めない段階です。
ⅡA期: しこりの大きさが2~5cmでリンパ節転移のない場合、
もしくはしこりの大きさが2cm以下でも腋の下のリンパ節に転移がある段階です。
ⅡB期: しこりの大きさが5cmより大きくてもリンパ節転移のない場合、
もしくはしこりの大きさは2~5cmでも腋の下のリンパ節に転移がある段階です。
ⅢA期: しこりの大きさが5cmより大きくて腋の下へのリンパ節転移がある場合、
もしくはしこりの大きさに関わらず
腋の下のリンパ節への転移が強いと思われる段階です。
ⅢB期: 皮膚や胸壁への浸潤がある段階です。
ⅢC期: 腋の下よりも遠くのリンパ節に転移している段階です。
Ⅳ期: 癌が他の部位、例えば骨、肺、肝臓などに転移している段階です。

5.治療

乳癌の治療は、外科療法、薬物療法(化学療法、ホルモン療法)、放射線療法が主体になります。癌の進行度にあわせた治療法を用います。

1)外科療法

乳癌が他の臓器に転移していないときには、手術が行われます。乳癌の手術は、以前は胸筋温存乳房切除術が行われていましたが、2003年以後は乳房温存術の方が多くなってきました。但し、両術式ともに腋窩郭清(腋の下のリンパ節をとってくる手術)を行うのが標準でした。そのため、手術後に腕が挙がりにくくなったり、腕がむくんだりすることがありました。しかし、近年では検診の普及とともに早期に乳癌がみつかることが多くなってきたためにセンチネルリンパ節生検を行ったうえで、腋窩郭清を行わない方法もでてきました。この方法により、少なくなりました。当院でも、乳癌で手術を受けるうちの約3分の1の方がセンチネルリンパ節生検を行うことにより腋窩郭清を省略し、後遺症の少ない術後を送っています。

2)薬物療法

手術時にすでに他の部位に転移がある場合には、手術をしただけでは乳癌は治りません。しかし、手術時に検査でわかるような転移があることは珍しく、微小転移(目に見えないような小さな転移)の状態で他の部位にあるわけです。これらが、大きくならないようにたたくのが術後補助療法です。癌の程度にあわせて、化学療法剤、ホルモン療法剤を使います。これらの、治療法の選択は現在では世界中でほぼ同じように行われており、当院でもその時期に世界で最も標準的に行われている方法を採用しています。

3)放射線療法

乳房温存術の際には、手術後に残った乳房に放射線をかけるのが一般的です。1回の照射時間は数分で体に対する負担も比較的小さいのですが、25~30回の通院が必要です。

施行レジメン一覧

番号レジメン番号レジメン名
1 07010010_5 ≪EC≫ EPI + CPA (90/600)
2 07010020_4 ★Tri-weekly PTX (175) (乳がん)
3 07010030_4 ★Weekly PTX (80) (3投1休)
4 07010040_5 Tri-weekly DOC (75)
5 07010050_6 ★≪CMF≫ CPA + MTX + 5-FU (100/40/600) (エンドキサン)
6 07010060_7 ≪AC≫ ADM + CPA (60/600)
7 07010070_8 ≪FEC100≫ 5-FU + EPI + CPA (500/100/500)
8 07010080_3 ハーセプチン (4→2) (初回)
9 07010090_3 ハーセプチン(4→2)(2回目以降)
10 07010095_3 Tri-weekly ハーセプチン (8→6) (初回)
11 07010097_3 Tri-weekly ハーセプチン (8→6) (2回目以降)
12 07010100_6 ★PTX + ハーセプチン (80/4→2) (1コース目)
13 07010110_6 ★PTX + ハーセプチン (80/4→2) (2コース目以降)
16 07010140_6 DOC + ハーセプチン (70/2) (1コース目)
17 07010150_6 DOC + ハーセプチン (70/2) (2コース目以降)
18 07010160_3 VNR (25)
20 07010175_6 DOC + CPA (70/600)
22 07010181_4 CPT-11 (100) (乳癌)
23 07010182_3 ★ハーセプチン (ゼローダ)(4→2) (1コース目)
24 07010183_3 ★ハーセプチン (ゼローダ)(2コース目以降)
25 07010200_2 GEM (1250)
26 07010210_3 ★PTX + GEM (175/1250)
27 07010220_1 Tri-weekly アブラキサン (260)
28 07010230_1 ハラヴェン (1.4)
29 07010280_2 ★Weekly PTX + BV (90/10)
30 07010290_2 Tri-weekly DOC + ハーセプチン (75/8) (1コース目)
31 07010300_2 Tri-weekly DOC + ハーセプチン (75/6) (2コース目以降)
32 07010310_3 ハーセプチン + GEM (8/1250) (1コース目)
33 07010320_2 ハーセプチン + GEM (6/1250) (2コース目以降)
34 07010330_2 ハーセプチン + ハラヴェン (8/1.4) (1コース目)
35 07010340_1 ハーセプチン + ハラヴェン (6/1.4) (2コース目以降)
36 07010350_2 Tri-weekly パージェタ + ハーセプチン + DOC (840/8/75) (1コース目)
37 07010360_2 Tri-weekly パージェタ + ハーセプチン + DOC (420/6/75) (2コース目以降)
38 07010370_1 カドサイラ (3.6) (初回)
39 07010380_1 カドサイラ (3.6) (2回目以降)
43 07010420_1 ★パージェタ + ハーセプチン + PTX (840/8/80)(1コース目)
44 07010430_1 ★パージェタ + ハーセプチン + PTX (420/6/80)(2コース目以降)
45 07010450_1 ≪CbG≫CBDCA + GEM (2/1000)
46 07010460_1 ★Weekly PTX (80) (連投用)
47 07010470_1 ★Weekly ハーセプチン + PTX (4/80) (連投用) (1コース目)
48 07010480_1 ★Weekly ハーセプチン + PTX (2/80) (連投用) (2コース目以降)
49 07010490_1 パージェタ + ハーセプチン + VNR (840/8/25) (1コース目)
50 07010500_1 パージェタ + ハーセプチン + VNR (420/6/25) (2コース目以降)
51 07010510_1 パージェタ + ハーセプチン + ハラヴェン (840/8/1.4) (1コース目)
52 07010520_1 パージェタ + ハーセプチン + ハラヴェン (420/6/1.4) (2コース目以降)
53 07010530_1 ハーセプチン + VNR (8/25) (1コース目)
54 07010540_1 ハーセプチン + VNR (6/25) (2コース目以降)
55 07010550_1 パージェタ + ハーセプチン (840/8) (1コース目)
56 07010560_1 パージェタ + ハーセプチン (420/6) (2コース目以降)

6.進行度別治療法

0~Ⅲ期: 外科療法の適応です。
その後、手術で採取した癌を調べて進行度にあわせた術後補助療法を行います。
Ⅲ期の一部: 皮膚または胸壁に浸潤している等の理由で手術だけでは切除が困難な場合には、
最初に薬物療法(化学療法)を行って癌を小さくしてから手術を行います。
Ⅳ期: 薬物療法を行います。
基本的には手術は行いませんが、場合によっては癌が小さくなったときに
手術を行うこともあります。

7.予後

以下は統計学的数字であり、個々人に当てはまるものではありません。さまざまな因子が関係しますので、あくまでも参考としてください。また、臨床病期の定義が現在とは若干異なります。
10年生存率は、0期95.1%、Ⅰ期89.1%、Ⅱ期78.6%、ⅢA期58.7%、ⅢB期52.0%、Ⅳ期25.5%です。